研究室紹介


アドホックネットワークのための通信プロトコルの研究

 アドホックネットワークのための通信プロトコルの研究、モバイルコンピュータの発達と普及により、これを活用したシステム構築が広く行なわれている。モバイルコンピュータを利用して一時的に構成されるネットワークは、アドホックネットワークと呼ばれている。アドホックネットワークは、会議やイベントの際に一時的に構成され、それが終了するとともに利用が終了する。このような特性を持つネットワークを支援するためのプロトコル群について研究する。具体的には、以下に挙げるプロトコルを研究する。
  • ループ探索に基づくアドホックルーティングプロトコル (LBSR)
  • 複数経路を用いた安定なパケット配送のためのアドホックルーティングプロトコル (MPAODV)
  • 電力制御と方向制御による衝突の少ないアドホックルーティングプロトコル
  • 高速移動コンピュータ群の間欠的通信のためのアドホックルーティングプロトコル
  • マイクロセルネットワークのための3次元アドホックルーティングプロトコル

耐故障コンピュータネットワークの研究

 コンピュータネットワークでは、複数のコンピュータで動作する複数のプロセスの協調によってアプリケーションが実現される。これらのコンピュータは、ネットワークで接続され、プロセス間の協調はメッセージの交換によって実現される。このような環境において、アプリケーションを高信頼に実行する、すなわち、あるプロセスに障害が発生してもアプリケーションの実行を継続できるメカニズムの研究を行なう。これを実現する方法には、大きく2つの方法がある。ひとつは、複製による多重化であり、もうひとつがチェックポイントを用いた再実行である。本研究では、これらの両面について新しい手法を提案する。特に、インターネットをはじめとする広域のネットワークでの多様性を考慮した方法を考案する。ここでは、移動体ネットワークを対象に含む。また、マルチメディアデータが送受されるネットワークのための新しいチェックポイント手法についての研究を行なう。具体的には、以下に挙げるプロトコルを研究する。
  • マルチメディアチェックポイントプロトコル
  • モバイルネットワークのための複合チェックポイントプロトコル

高速広帯域LAN構成手法の研究

 マルチメディアをはじめとする大量データを利用するネットワークアプリケーションの実行を可能とするLANの実現が求められている。バックボーンネットワークでは、特定のルータ間に複数の通信路を静的に設けることで広帯域通信を実現している。しかし、任意のコンピュータ間の通信が可能なLANにおいては実現されていない。本研究では、LAN内のコンピュータに複数のNICを装着し、コンピュータ間をスイッチングハブで接続することによって、LAN内のコンピュータ間に複数の通信路を動的に設け、広帯域通信を実現する方法を提案する。ここでは、複数のNICに同一のIPアドレスを与えることによって、アプリケーションを変更せずに利用可能としている。これは、ひとつのIPアドレスに複数のMACアドレスを対応づける拡張ARPによって実現される。NICの種類に依存せずに利用可能とするために、LINUXとFreeBSDのカーネルへの実装を行なう。なお、開発したソフトウェアは、フリーソフトウェアとして公開する予定である。

ホームネットワーク構成技術の研究

 家庭内でコンピュータネットワークが構築されるようになっている。それにともない、ネットワークを介してコンピュータで家庭電気製品(家電)を制御、管理することへの要求が高まり、情報家電と呼ばれるネットワーク接続機能をもった家電が登場した。その結果、情報家電とコンピュータを相互接続するホームネットワークが注目され始めている。ホームネットワークの分野では、コンピュータが自律的にユーザをサポートする環境の研究開発が行なわれている。サービスの実現のためには、ユーザの位置情報が重要な役割を果たす。これまでオフィスやフィールドなどを対象として、ユーザが特別なデバイスを携帯することを前提とした方法が提案されている。しかし、家庭内ではこの前提は成り立たない。そこで、本研究では、環境がユーザを発見することで位置情報を取得し、その情報をもとに情報家電を駆動するシステムを提案する。ただし、一般家庭において広く利用されるためには、複雑な装置を必要とせず、家具等の配置による影響を受けにくく、容易に導入可能な手法とすることが必要である。そこで、ユーザの位置を特定し、無線LAN通信を介した分散協調動作によって情報家電を駆動することによってアプリケーションを実現する簡易デバイスを研究開発する。

ネットワークソフトウェアプラットフォームの研究

 ネットワークの発達にともない、多くのコンピュータアプリケーションはネットワークを活用するものへと変わってきている。このネットワークアプリケーションを効率よく実行するためには、システムソフトウェアによる有効はサポートが必要である。そこで本研究では、これを実現するためにオペレーティングシステム(OS)で必要とされる機能、ミドルウェアで必要とされる機能というものを明確にし、そのそれぞれについて新しい技術を提案する。特に、ネットワーク内のリソースを複数のコンピュータ内で有効活用し、アプリケーションを効率よく実行する機構について研究する。最終的には、研究成果の要素技術を用いて、ネットワークソフトウェアのための新しいプラットフォームを構築することを目標としている。

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